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コラムColumn

【建築主の声】和をコンセプトに設計した リビングから クルマを眺める空間。生駒のガレージハウス・奈良

生駒のガレージハウス・奈良 外観

住宅を建てるのは初めてだったし、いろいろな意見を聞いて判断したかった。

所在地/奈良県生駒市
敷地面積/202.3m2(約61.2坪)
延床面積/109.1m2(約33.0坪)
ガレージ面積/24.6m2(約7.4坪)
愛車(取材時)/1995年ランチア・デルタ、ハーレー・ナイトロッド、 ドラッグスター・ロードクィーン
ビルトイン台数/クルマ1台、バイク2台

 

愛車と暮らす、夢のガレージハウスづくり。

雑誌 ガレージのある家 vol.11 掲載
text / GarageLife編集部 photo / Kazushi HIRANO(平野和司)、Toshihiro YOSHIKAWA(吉川寿博)


▲ 夜はガレージがライトアップされ、まるでクルマのショールームのようなS邸。まさに、クルマが主役といえる。ガレージと土間は強化ガラスで仕切られている。
 

理想のガレージングハウスを建てるためにザウスにプロデュースを依頼したSさん。工事も順調に進み、初めての打ち合わせから10 ヶ月で引渡しとなった。新車で買った1995 年式ランチア・デルタをリビングから眺められる、完成したばかりの住まいで建築家・田中いちろうさんを交えてインタビューさせていただいた。

生駒のガレージハウス・奈良 ガレージ
▲ Sさんにとって、愛車・ ランチア・デルタは特別な存在。その愛車をリビングに居ながら、身近な存在として感じられることは言葉にならないほどの喜びなのだ。
 

編集部(以下 編):どうして今回はザウスの設計コンペというシステムを選んだのでしょうか?
施主・Sさん(以下 S):「住宅を建てるのは初めてだったし、いろいろな意見を聞いて判断したかった。ザウスさんの場合は、1度のヒアリングで建築家の3者3様の提案を見ることができるので、私たちには丁度よかったです」。

編:「Sさんが、ザウスのヒアリング時にリクエストした内容を教えてください。」
S:「ガレージにあるクルマがリビングから見えることが条件の1つ。そしてバイクも2台所有しているので、クルマもバイクも出し入れしやすいことをリクエストしました。もう1つは、妻が琴を弾くためのスペースを確保することでした」

編:「そのヒアリングから3つのプラン提案があったわけですが、ずばり、田中さんを選んだ決め手は何処でしたか?」
S:「どの提案もそれぞれ良かったのですが、田中先生の提案はバイクの出し入れに工夫が見られました」

編:「S邸は、クルマ用としてレムコ製のオーバースライドドアが取り付けられ、バイク用として、建物のサイドには三和シヤッターのスチール扉が採用されてますね。クルマとは別にバイクの出し入れがスムーズに出来ることが最大のメリットですね」
S:「本当に使いやすく、このアイデアはびっくりしました」

編:「ガレージ内の換気扇も目立たないように壁面と同じカラーリングでペイントしていますね」
S:「プラスチック製の換気扇だったので、白い換気扇の色が目立ってしまう。そこで壁面と同じ色で塗ってもらいました」
編:「壁面の色は何か参考にされたのですか?」
S:「施工会社の方に以前から愛用しているライダース・ジャケットを見せて、その現物を見ながら色合いを調合していただきました」

編:「和室もかなりインパクトがありますね」
S:「この和室は妻が琴を弾く部屋です。普通は防音室とするのでしょうが、叩く楽器と違い、琴は苦痛にはならない音色を奏でるので、田中先生はあえて近所に音が漏れてもよい空間として提案されました」
編:「それは田中さんのナイスアイデアといったところでしょうか? 壁面の染色和紙を使うあたりもインパクトのある部屋の要因でしょうか・・・」
建築家・田中さん(以下 田):「計算どおりです( 笑)。夜になると赤く染まった窓は美しく映るはずです。」

S:「実際に3人の建築家のプレゼンを聞いていて、本当にクルマ好きの建築家ということが分かり、話がしやすかったことも、田中先生を選ぶ大きなポイントになりましたね」
つまり、デザインやコストも重要だが、住まいづくりには建築家とのフィーリングも重要ということかも知れません。なぜなら、コンペで提案されたプランを意見交換しながら、長い期間を経て改良を重ね、“いい家” “理想のガレージングハウス” は建てられるのです。そのことを踏まえると、事前にヒアリングやコンペで建築家の人柄に触れられる機会は、とても貴重なのかもしれません。

編:いやな質問ですが、改善しておけば良かったところはありますか?
S:「もう少し、収納するスペースがあってもよかったかも知れません。漫画本が多いとは伝 えていましたが、冊数まで伝えていませんでした・・・・」
田:「・・・・・・( 笑)」

生駒のガレージハウス 外観ガレージ
▲ 大胆な片持ちの2階部分は、奥様が琴を弾くための和室。S邸の外観の大きな特徴でもある。構造計算には細心の注意を払い、デザインされている。
 

和をコンセプトに設計したリビングからクルマを眺める空間

竣工したS邸。ザウスのプロデュースにより、コンペで勝ち抜いた建築家・田中一郎さんの提案が具体化。施工は、建築工房アクトホームズが施工会社3社による競争入札で決定した。4月上旬に着工し、会社員のSさんは、勤務後、毎日のように建築現場に立ち寄り、工事の様子を見守った。ガレージに停めるクルマは新車で購入した1995 年モデルのランチア・デルタと、1年前に購入したハーレーダビッドソン・ナイトロッド、ヤマハ・ドラッグスター・ロードクィーンである。施工現場を見ながら、ガレージには何を飾ろうかと考える毎日は非常に楽しかったそうだ。現場で疑問に思ったことは、ザウスプロデューサーへ確認し、解消する。そんな毎日を続けながら、無事、8月下旬にS邸は竣工した。

生駒のガレージハウス・奈良 リビング
▲ リビング(和室)から土間越しにガレージを眺める設計は、建築家・田中一郎さんが最もこだわった空間である。どこか懐かく感じる和室と「ガレージ」は異質でありながら、違和感なく存在する。
 
生駒のガレージハウス・奈良 リビング吹き抜け
▲ 2階廊下から1 階リビングを見下ろす。家族の存在が感じられるよう、適度な開放感と間仕切りによって空間が構成されている。
 

ガレージの広さは24.6m2、クルマ1台とバイク2台を入れてもまだ余裕のあるスペースとなった。建築家・田中さん曰く「リビングからクルマを見ることができても、どのようにク ルマのディテールが見えるかが重要。もちろん、S邸も研究をしてライトの設置場所など工夫をしましたよ」。「本をたくさん所有しているので、階段下に本棚を造作しましたが、このようなリビングからのクルマの見え方がベストだと考えました。昼間はさりげないガレージとして存在し、しかし、夜は『クルマが主役』とばかりにライトアップされる。またリビングとガレージの間に土間をつくったことも、空間を飽きさせないポイントでした」

生駒のガレージハウス・奈良 リビング土間
▲ 鉄工所に特注で製作を依頼した階段は、床のカラーリングとコーディネイトさせることでなじんでいる。シンプルなデザインがマッチしている。
 
生駒のガレージハウス・奈良 ガレージ奥
▲ ガレージ奥には収納棚を利用して、大量の趣味の本や漫画などを収納。その隣はご主人の書斎となっている。
 

敷地に余裕があったので、正面の入り口の他に建物のサイドにバイク専用のシャッターを設置。2つのシャッターを取り付けたことが、S邸の特徴である。Sさんも「最初はクルマを避けながらバイクを停めることを予想していましたが、サイドにシャッターがあることで バイクの出し入れが非常に楽になりました。」

建物全体はSさんの要望である「和」をテーマにデザインされた。仕上げ素材にスギ材を取り入れ、スギ材の持つ風合いで和モダンを表現している。スギ材は加工しやすい常緑針葉樹で、木目が美しい木材。スギに色つきのオイルステンを施すことで傷がつきにくく、メンテナンスも楽である。

生駒のガレージハウス・奈良 2階渡り廊下
▲ 2階部分の和室と寝室を結ぶ廊下は、建築家の大胆な発想によるもの。ダークな色使いにより、和をより濃く演出している空間でもある。
 
生駒のガレージハウス・奈良 和室
▲ ネパールで盛んな和紙の重ね張りで仕上げられた和室。大胆な色使いと窓の位置に工夫を施し、個性的であり、幻想的な雰囲気が感じられる。
 

また2階の和室にも、建築家のアイデアと工夫が施されている。この部屋は奥様が琴を 奏でるためのスペースでライティングはやや暗く、落ち着いた雰囲気のなかで練習に励むことができる。防音ではないものの、使われたガラスは通常3mm から8mm に変更され、京都『一力茶屋』をイメージした染色和紙の重ね張りが施された。天井にはよしずを吊り、和モダンを意識した仕上り。和の雰囲気を一層に引き立てる照明は、田中氏から竣工を記念して送られたプレゼントである。

 

所在地奈良県生駒市
竣工2007年8月
敷地面積202.3m2(約61.2坪)
延床面積109.1m2(約33.0坪)
ガレージ面積24.6m2(約7.5坪)
愛車(取材時)1995年ランチア・デルタ
ハーレー・ナイトロッド
ドラッグスター・ロードクィーン
設計田中一郎
施工建築工房アクトホームズ
プロデュースザウス株式会社
 

ガレージのある家 vol.11 掲載
雑誌ガレージのある家 vol.11 表紙
発行年月日:2007年11月10日
出版社名:株式会社ネコ・パブリッシング

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